最初は身内のネタ公開で始めたブログでありますが最近はアナログビギナーの方にもご訪問頂いてます
そういえばベテランは知ってるだろうと端折って言葉が足りない記事も多かったと思います
今回はなるべく写真を交えアナログビギナーにレコード再生の奥深さをちょびっとでも伝えたいと思います
レコード針とは?
一般的に丸で囲った部分を「針」と呼ぶことが多いです
針が折れたなんて表現はこの銀色の棒が折れたことを示すことがほとんどです
それで間違いではないしベテランでも「針が折れた(泣」と言うときはこの銀色の棒が折れたことを言います
では正式名
DENON公式HPより
カンチレバーと呼ぶ部品であります
この図で言う「ダイヤモンドチップ」がレコードから振動を拾う「針」となります
針先、スタイラスチップ、ダイヤモンドチップなど呼び名は色々です
ムク針と接合針
ムク針=無垢針
ダイヤモンド針が実用化された時は無垢針でした
オルトフォン MC10MK2
無垢針の写真です
ムク、無垢、ソリッドダイヤ、ブロックダイヤなどと呼ばれます
ムク針でも超高価な訳ではないのですがレコード針超大量生産時代になり加工性が良く更に安価な接合針が登場します
接合針
audio-technica AT-E30
チタンなどの金属にダイヤチップを接着し土台ごと研磨して作ります
接合針、ボンディングチップなどと呼ばれます
安価にできますが難点は土台が金属なので重い事、後述しますが針は軽くなくてはいけないのです
DENON DL-65
接合の土台が錆びてます、文献によると接合針の土台はチタンとされてる事が多いのですがチタンは錆びません
ここまで錆びると鉄系金属かも知れません
すると益々重くなりますね
並木宝石様によれば最初は鉄の土台、あとからチタンの土台が開発されたとありますがDL-65はそんなに古くない、接合でもグレードでチタンと鉄が使い分けられていたのかしら
針先形状
丸針、楕円針、ラインコンタクト、シバタ、マイクロリッジなど
先っぽの形状です
SHURE M44G
丸針
例は細かく言うと接合の丸針
円錐の断面がまん丸
丸で問題は無いのですが溝を進むとき左右の接点が微妙にズレるなどの理由で楕円針に進化します
オルトフォン MC-20MK2
楕円針
例は細かく言うと角柱ブロック楕円針
楕円に研磨しています
楕円針にもグレードがあってこれは本物
なんちゃって楕円針もあるのです
audio-technica AT-E30
丸針の前後を研磨し楕円にする手法
研磨度合いによるんだろうけどこの針先見る限り接触面は丸針とあまり変わらない気がする
audio-technica AT33VTG
マイクロリッジ針
もはや小さすぎて説明用の写真を個人で撮るのは不可能なので
並木宝石様から画像お借りしました
接触部が薄いヘラ状なので摩耗しても太さが変わらず長寿命
ちなみにAT33VTGのダイヤは0.07㎜角
髪の毛より細い
よくこんな形状に研磨できるもんだ
他、シバタ、ラインコンタクト、ファインラインなど色々な形状があります基本的に楕円針を進化させた物とカッター針に類似させたものに分類されます
摩耗
technics EPC-P30
先の部分が摩耗し段差ができています
また摩耗個所は面が出ています
technics EPC-H25
極端な段差は無いけど面が出てる
Technics EPC-P310MC
悲しいかなP310も減る
テクニクスばかり出したけどテクニクスが悪いんじゃなくて沢山売れるからサンプルが多くなります
チップ落ち
読んでお分かりの様にダイヤチップだけ落ちる事故
Pioneer PC-3MC
もとは接合楕円針が付いていたけどここまで捥げたら接合も無垢も関係ない
Technics EPC-P202C
の下位互換EPS-P22
接合の土台だけ残ってダイヤチップだけ無くなってます
もとはこんな感じ
empire 4000D1
世にも珍しい無垢針の先折れ
チップ落ちの場合気が付かずに盤に乗せると針先が滑ってトレースしません
例外もありチップ落ちした土台に棘のような出っ張りがあるとトレースしちゃうケースもあります、この場合ものすごく歪んだ音になるので容易に判別できます
確認方法は指でそっと撫でます
明らかに尖った感触があればOK
なんか出っ張りはあるけど「するっ」とした感触であればチップ落ちになってます
針先実効質量
レコード再生は言い方を変えるとレコードの溝で針を揺する行為になります
20kHzでは1秒間に2万回も揺すられる、音声信号では他の周波数も入るので複雑な波形をトレースしなくてはなりません
なので振動系は軽くする必要があります
質量で一番効くのは針先
直接揺すられますから
もちろんコイル、マグネットなども軽い方が良いのですがテコの原理が働くので針先ほどは効きません
以下の写真、マイクロスコープの最大倍率固定で針先のフォーカスしているので大体の大きさの比較はできます
SHUER M44G
かなり大きいですね
また接合土台がとても大きく仮にチタンだとしても重いと感じます
DENON DL-103
根本は0.2㎜角
M44Gより小さく、また無垢針なので軽いです
DENON DL-301
根本は0.07×0.14㎜
ガクンと小さくなりました
DENON DL-304
公式ソースで針先のスペックは得られませんでしたが0.07×0.1㎜との情報もあったけど正角柱に見えます
小さいですね、最小サイズに迫ります
スペックが判明してる一番小さいのがDL-1000の0.6㎜角
相手がレコードなのでこれ以上小さくすると曲率半径も小さくなって底を擦っちゃいますからここら辺が最小
けっこう大きな差でしょ?
これを高速で振動させるのですからこれだけ違えば全然違う音質になるのは想像がつくのではないでしょうか
もちろんロースペックの針でも歴史的名機、システム全体とのマッチングで良い音を出すことはありますが基本は軽い針がいいのです
針圧じゃないですよ、針そのものの重量の事です
長くなりました、言葉が足りずに伝わらないこと、間違った言い回しが多々あると思いますがアナログビギナーにたった針先でも多種多様で「安くても十分な音」もあるけどそれだけじゃなくて「コストに見合った音」もあるんだよと写真で伝えたかったのであります
おしまい
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